「労働争議調停仲裁法」(以下「新法」と略称する)は2008年5月1日より実施する。2008年1月1日より実施している新しい「労働契約法」と比べると、労働契約法が実体法の角度で労働者の利益を守るが、新法が手続法の角度から労働者の利益を守る手段の効果を一層強化させると考えられる。
今回の「労働争議調停仲裁法」は従来の労働争議に関する規定と比べ、下記の相違点がある:
一、 定義範囲の拡大
例えば、会社が労働者の社会保険を納めなかった場合、従来、労働者は労働監査部門に処理を要請するしかないが、新法によって自ら社会保険争議の理由で労働仲裁を申立てることができるようになる。このように、労働争議に関する定義の範囲の拡大によって、多くの労働人事紛争は直接労働争議のレベルに入る。
二、挙証責任の強化
今後、労働争議があった場合、会社側の挙証責任はさらに重くなる。挙証できなかった場合、会社が不利な結果を被る。そのため、会社は突発事件の挙証ができるように普段から労働契約、就業規則、社内規程、採用条件、評価制度、賞罰規程、支給、勤怠、退職引継等について書面資料の管理・保存を徹底することが必要である。
三、 仲裁の申請期間の延長
従来、労働者は労働紛争が発生した日から60日内に仲裁の申請を行うべきであり、また、労働報酬に関する紛争の場合、多くとも二年間の報酬しか要請できないとされていたが、新法では仲裁の申請期間が一年と延ばされるとともに、労務報酬の未払に関する紛争の場合、適用例外として一年の申請期間の規制がないとされている(但し、労働関係が終了した場合、労働者が労働関係の終了日から一年内に仲裁の申請を行うべきである)。
四、 会社側にとって、一部の仲裁裁決は終局となる
労働争議の処理について、従来は、まず仲裁で始まり、当事者(労働者と会社側)が仲裁裁決に不服であれば、訴訟を提起することができるという流れであったが、新法では以下のいずれかの場合、労働者が裁決書を受け取った日から15日以内裁判所に起訴することができるが、会社側が起訴できずに仲裁で終局となる:(一)労動報酬、労災医療費、経済補償金又は賠償金の請求金額が当地の最低月給標準の12ヶ月の金額を超えていない争議;(二)国家の労働基準を執行する際、発生した勤務時間、休憩休暇、社会保険等の争議である。例えば、上海地域の最低給与基準が2007年9月1日から840元となっているため、上海において10,080元(840元×12ヶ月)以内の労働報酬、労災医療費、経済補償金又は賠償金を請求する争議の場合、労働者は不服がなければ、仲裁で終局となる。特別な事情がなければ、会社側はたとえ納得できなかったとしても、裁判所に起訴することができない。
但し、新法によって、下記の場合は「特別な事情」と定められている:(一)法律適用に誤りがあった;(二)仲裁委員会に管轄権がなかった;(三)法定手続を違反した;(四)裁決に偽造証拠があった;(五)相手方は公正な裁決に影響を及ぼす証拠を隠した;(五)仲裁員に受賄行為があって、私情に取られて法を曲げたり、不正行為を行ったりした。上記のいずれかの事情について会社側は証拠があれば、所在地の中級裁判所に仲裁裁決の取消を申し立てることができる。中級裁判所が取消の裁定を下った場合、会社側は裁定書を受け取った日から15日以内裁判所に起訴することができる。
五、 労務争議の仲裁委員会の日常経費は国より提供されるするため、仲裁費用が無料になる
中国では、労働争議の発生が毎年平均20%~30%のスピードで増加しているが、さらに2008年には50%以上増加の見込みである。争議解決の効率及び公正性を確保するため、国は財政予算でその費用を負担するようになった。そのため、労働争議の解決案件数と品質が大幅に改善されると考えられる。
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