昔、お正月のために、各家庭はおせち料理の準備で、十二月中旬から大忙し。でも最近になると、デパートや料理屋さんでのおせち料理販売が人気で、共働きの家庭でも、おせち料理を作る時間の心配がなくなり、お正月で立派なおせち料理が食べられるようになった。が、元々、おせち料理は保存を考えて、生まれた料理とも言われ、また、おせち料理の一品、一品に縁起のよい意味が含まれている。いまは、単なる有名店のおいしい料理を食べて、お正月を迎える単純な行事になってしまい、心のどこかでちょっぴり寂しさを感じる。
お正月ではなくても、食べたいときにおせち料理の中の大好物を作って食べられることは、一つの楽しみになると私は思う。また、そのおせち料理に含まれている意味を知ることも一つの雑学ではないか?今回は、食べ残しのおせち料理をつまみながら、おせち料理の意味を考えていきたい。
各家庭で、おめでたい縁起にちなんだ料理を詰めて、わが家らしさを出していくのがおせち料理の醍醐味かもしれない。まず、現在、祝い酒として飲まれている屠蘇は、本来は元旦の朝、井戸水に薬草をいれ、清めて飲んだ風習が由来で、一年の邪気を払い、無病息災の願いがこめられている。
次は料理の内容に入ると、地方によりお重に盛り詰める料理は様々だが、ここで、現在一般的な物を例にしよう。おせちに、一の重「祝い肴と口取り重」、二の重、三の重と重箱に詰めるのが普通である。
まず一の重、祝い肴といえば、関東には、真っ黒になるほど健康でまめに働けますようにと、黒豆が入る、関西の場合は、深くしっかりと根をはって、生きていけますようにと、たたきごぼうが入る。その他、たくさんの子に子孫繁栄をたくせますようにと、数の子、五穀豊富の縁起物ごまめ、財産が増えることを願う、栗きんとんとしっかり根をはるゆりの根で、ぼたんの花を模したぼたんゆり根、めでたい初日の出をあらわして飾る紅白のかまぼこ、学業成就を願う、昔の巻物に似ている伊達巻き、よろこぶことが多いようにとの祈りを込めての昆布巻き、長寿の願いをほんのり甘く煮たきんかんの甘露煮というように彩りよく、重箱に詰めてある。この一の重があれば、酒好きな方なら、もう満面の笑みが浮かぶのではないか?
次は二の重を見てみると、酢の物がメインともいえる二の重。まず、高級品として代表するひろめの昆布じめ、将来をしっかり見通せる人間になりたいとの願いを込めて、酢れんこん、紅白のなますは、赤は魔よけ、白は清浄を示す。そのほか、銀色の美しさを持つさごしの香味付けはその色を借りて、お重に彩りをそえる。平安時代から欠かせない鮭の南蛮漬けなどで二の重を鮮やかに埋めていく。
三の重に辿り着くと、焼き物がメインになる。淡白な味わいのものは、さめてもおいしくいただけるように工夫された材料と焼きに日本の知恵が見えてくる。
酒かすで味わいを深めたイカを正月らしく松笠に切ったー松笠。イカのかす漬け焼きにイカ好きな日本人にとってはたまらない一品である。おめでたい出世魚の代表であるぶりの照り焼きは欠かせない一品で、春の七草のすずなは、カブのこと、菊の花を模して長寿を祈る菊花カブの酢漬けは芸術品ともいえるだろう。そのほか、長生きできますように願う、車海老の柚子焼きは子供の大好物!
あざやかな紅色がお重に花をそえる酢どりしょうが(はじかみ)が見事である。鶏のみそ松風は唯一の肉料理、魚介や野菜に負けない存在であることは確か。もちろん、高級なホタテのうに焼きも忘れずに!
最後に、与の重となる。これは煮物を一杯つめてあるお重である。家庭によって、味が違うし、その家族の味、個性をこのお重で現すといっても、過言ではない。伝統的となると、鶴と亀の長寿を意味する亀甲しいたけ、めでたい松竹梅の一つにあやかって、ねじ梅にんじん、スクッと伸びる竹の意味をとり、おめでたい末広がりの形になった末広たけのこ、馬を神様に奉納する名残りが今でも絵馬に残っている手綱こんにゃく、鶴をかたどって長寿を願う鶴こいも、芽が出るといった縁起ものの六角くわい、やさしい心をもつ願いで高野豆腐の甘煮がこの与の重の主な内容である。
一見して読むと、難しいそうだけど、今の巷に流行っている難しいイタリア料理、フランス料理などと較べたら、素材の良さを大事に守ったシンプルな調理方法が殆どである。お正月でなくても、日常生活に取り入れてもおかしくない料理。時に、願いごとがあるとき、誕生日の食事会の時、試験を受ける前に、家族に作ってあげたら、絶対喜ばれると思う。また、世界中が日本料理に大変興味を持つ時代になってきているこの頃、おせち料理は日本料理の中で、もっとも基本となることではないだろうか?おせちはお正月しかたべられない料理ではない、作りたいときに作ればよい立派な日本料理である!と私は思う。 |