中国政府が施行している労働契約法は、世界において一位、二位に数えられる労働者を最も保護する法律とは言えるが、単なる法的条文でもある。労働契約法は確かに慎重深くて制定されているが、実務上からみれば、実行性の格差の存在が避けられない問題となっている。労働紛争が発生した場合はまず現地の労働仲裁委員会にて仲裁を行わなければならない。その後に当事者のいずれが仲裁の判断に不服すれば、裁判所に起訴することができる。裁判所では、まず第一審が行われ、当事者のいずれが第一審判決に不服であれば、第二審の訴訟提起が行われる。このような流れによって、仲裁委員会と裁判所の時間が費やされる。また、「長期戦」の姿勢で紛争解決の時間を引き延ばす雇用主もある。労働者が労働報酬で生活を維持しているため、紛争解決の時間が引き延ばされれば、労働者にとって不利となる。政府当局はこのような労働法の実施による不公平な点を改善するため、「労働争議調停仲裁法」を実施し、外資系企業がその衝撃を受けることとなった。
外資系企業は以下の点から、労働仲裁法が企業に与える影響を判断することができる。
1、仲裁判断が終局なものである
労働仲裁委員会の裁決が軽視されることを防止するため、今後、労働紛争にかかわる起因(例えば勤務時間、休息休暇、又は従業員の社会保険金未納等)が明確である場合、労働仲裁委員会による仲裁判断は終局になり、使用者が裁判所へ起訴することができないと定められている。また、労働報酬(残業代、各手当等を含む)、労災医療費、経済補償金、賠償金等が労働紛争の起因である場合、金額によって「仲裁判断が終局的なものである」原則を適用するか否かを決める。紛争金額が現地の最低月給基準の十二ヶ月分を超えていない場合は「仲裁判断が終局的なものである」原則を適用し、使用者が裁判所へ起訴することができない。逆には、紛争金額が現地の最低月給基準の十二ヶ月分を超えた場合、使用者と労働者のいずれが仲裁判断に不服であれば、裁判所へ起訴することができる。
2、企業の時間によるリスクが大幅に増加
過去、労働者が退職後に労働仲裁を申し立てる場合、退職日から六十日を超えれば、仲裁の権利を失うと定められていたが、「労働争議調停仲裁法」によっては当該時効が六十日から一年に延びる。その結果、今後は労働者が退職後の一年以内にいつでも労働期間中の労働報酬やその他の本人の権益につき労働仲裁を申し立てることができるため、企業の労務人事上のリスクが大幅に増加することに間違いない。
また、時効に応じ、関連する書面的な資料や書類を証拠として保存することも大事である。最もよく労働紛争になる残業代を例にする。退職した労働者が労働期間中に会社から支給された残業代が不足と主張した場合、「労働争議調停仲裁法」の規定によって残業手当の支給記録を提供する挙証責任が会社側にある。会社が該当資料を提出できなかった場合、不利な結果を受けるしかない。
3、労働者にとって労働仲裁がさらに簡易化された
過去、労働仲裁に費用がかかったため、労働者の申し立てにある程度で影響があったと思われる。現在は、労働仲裁申立の費用が無料になったため、労働者にとって労働仲裁は手軽に申し立てられるようになった。おまけに、「労働関係履行地の仲裁委員会が優先管轄権を持つ」という原則に基づくと、支社所在地に発生した労働紛争は支社所在地の労働仲裁委員会によって管轄されるようになった。それによって、本社の労務人事管理の力が遠くまで及ばなければならなくなり、労働紛争解決のコストが大幅に増加すると予想される
|