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新映画紹介
ボリウッドの逆襲 オスカー席巻の話題作
スラムドッグ$ミリオネア
文/米瑞克 写真提供/山水国際 訳/駒田英

ムンバイのスラム街で育った少年がインド版「クイズ$ミリオネア」に参加し百万ドルの賞金を手にするという奇跡と感動のストーリー。しかし、当作品自体にも同じような奇跡のストーリーがあった。インディーズで作成され、投資会社の倒産によってお蔵入りの危機に瀕していたこの作品が、オスカーで作品賞を含む八部門を受賞し、世界中で数億ドルもの興行収入を記録すると、一体誰が予想していたことだろう。

スラムドッグ$ ミリオネア』はインドの外交官ヴィカス・スワラップの小説『ぼくと一ルピーの神様(原題Q&A)』をもとに映画化したものである。監督のダニー・ボイルは当初、「クイズ$ミリオネア」を題材にした内容と聞き、受け取った脚本をそのまま放っておいたという。その後、脚本が『フル・モンティ』のサイモン・ボーファイによるものと知ったボイルは、ボーファイに敬意を示し脚本を手にしたところすっかり引き込まれ、十ページ読み進めたところでメガホンをとる事を決めたのであった。

魅力的な出演者たち
全編を通じ、大物スターは出演していない。主人公を演じたロンドン在住のデーヴ・パテールを除き、主な役者は皆インド出身で、撮影クルーもその多くがインド「ボリウッド」のスタッフである。主人公の幼少期を演じた子役たちも皆ムンバイのスラム街出身であり、彼らもまさかオスカーのレッドカーペットの上を歩き、授賞式に参加する事になるとは夢にも思わなかっただろう。

ダニー・ボイル監督によると、主人公の役者を決める過程ではイギリスとインドで千人を超えるオーディションを行ったものの、なかなか適役がみつからなかったという。そんな折、悩む父を見かねた娘が、自らが好きなドラマに出演していたデーヴ・パテールを推薦した。ボイルはすぐさまパテールのオーディションを行い、思わぬ展開から望み通りの役者をみつけることができたのだった。

なお、デーヴ・パテールはこんなエピソードを明かした。主演女優フリーダ・ピントーとのラブシーンの際、傍らにいた母親にずっと見つめられていたため緊張のあまりNGを連発、ついにはボイル監督が母に退席を願い、ようやくこのシーンが順調に終わったのだという。

今や映画界注目の俳優となったデーヴ・パテールとフリーダ・ピントーだが、驚く事に二人は実際に交際しているという。ピントーにはモデルだった大学時代から交際している婚約者がいたが、映画の大ヒットによりハリウッド進出への思いをつのらせた彼女は、婚約者の願いを振り切り婚約を破棄したという。このことからも彼女の堅い決意がうかがえる。

題名をめぐる論議
原作を忠実に再現するため、インドのムンバイでロケが行われた当作だが、投資会社の倒産により、一時は上映中止、DVD発売のみとなる危機に直面していた。幸運にも、他の配給会社により支援を受け上映の機会を得ると、あとは驚きの連続であった。各国の映画賞を総なめし、評価が急上昇すると、興業収入も、アメリカ国内だけで制作費用の千五百万ドルを遥かに超える一億ドルを突破した。極めつけはアカデミー賞で作品、監督、脚色など八部門を受賞、まさに想像を越える勢いである。

一方で、映画が話題になるにつれ、いろいろな論議も生まれるようになってきている。インドで上映された際、題名の『スラムドッグ(Slumdog)』という単語は過度に貧困を強調し彼らを貶めているのではないか、という声があがり、配給元には題名の変更を求める声だけでなく、街頭での抗議デモまで行われた。また撮影にあたり、スラム出身の子役たちは映画製作者に搾取されたのではないか、という疑いをもつ人もいた。

ボイル監督と映画制作会社はこうした指摘を一切否定、彼らの為にすでに家を探しはじめており、就学機会と未来の教育資金の手助けをし、彼らが人力車によって通学できるようにすると表明した。また現地当局も彼らの住宅環境改善のために、新居を提供することに前向きであるとされる。しかしながら、このブームが過ぎ去ったのち、どれだけ多くの人が彼らに関心を持ち続け、彼らが本当に今の生活から脱することができるのか、その点については、今の時点でなんとも言い切れないというのが実情であろう。

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