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紡績工場跡地に生まれた 芸術文化スペース
上海のセーヌ左岸─M50
文、撮影/柳無心 訳/吉成久枝

上海は、とにかく思わぬ発見が多い。莫干山路50 号、ここはもと紡績工場だったが、今やその景色は一変した。M50という看板が世界各地によびかけ、芸術家らがここに集まって来ている。スイスの香格納画廊(Shangh ART)、イタリアの比翼芸術センター、フランスの東廊芸術(EASTLINK Gallery)、イギリス領事館文化芸術処芸術家アトリエ、カナダの芸術景画廊…等。これら才能あふれたアーティスト達から生まれた一瞬のひらめきが古工場で芽を出し、根をはった。そして、ここは「上海のセーヌ左岸」となった。

莫干山路の片側は平屋で雜貨店1 軒を間に挟み、依然として古い弄堂の趣が保たれている。街かどに佇む老人は、ここを訪れる観光客が向けるカメラの被写体になることが習慣になってしまったようだ。また、片側の道は高級住宅地区につながっている。シンプルとゴージャスがここでぶつかり合い、まさに芸術家のひらめきと激情とが相互に衝突しているかのようだ。M50の入口がここにある。

工場跡地は
自己実現の舞台

入口左側には「上海春明粗紡廠莫干山路50號」と書かれた看板が、また傍には金属模型の立体地図、上方にある「上海創意産業聚集区」の標示がこの工場跡地変遷の歴史を語る。

M50の大門をくぐると、「香風麗道」という喫茶店が入口付近の一等地を占領していた。「香風麗道」も石庫門家屋を改築したものだが、ドアの黒い金属枠が光を反射しガラスドアによく似合う。眼の錯覚からか、「香風麗道」の傍に煙突が現れ、ガラスに映し出された古工場が見える。新しさと古さが、こんなにも接近している。

入口付近にいくつか画廊があった。絵と絵は一定の距離を保ち、異なった風格の作品は曇りガラスで仕切られている。2、3枚の絵ごとにライトが当たる。奥へ進むほど画廊と倉庫が密着し、ここの絵と彫刻は壁のそばに隣り合い、無造作に置かれていた。同じ作品を違った角度で描写したものがほとんどで、似通った内容やその趣向に乱脈さはない。

芸術家たちは使われなくなった古工場をアトリエに改造しただけで、手間を掛けて整理などはしていない。仕事のない時、アトリエは自己実現の舞台に変わる。こんな気ままさがスマートでもあり、凝った門構えや精緻なインテリアの画廊に比べ、M50の芸術家たちは、金銭的利益より芸術がもたらす心地よさを楽しんでいるのかもしれない。

他にはない小さな工房
味わいある鉄器

「鉄哥們」と呼ばれる小さな工房もおもしろい。遠くから見える入り口の堆積物は創作後に出た廃棄物の山と思われる。が、実は、これがこの店の芸術なのだ。たくさんのタイヤ、オイルタンク、歯車、鋼板、鉄棒などで造られたロボットがある。それらに刻まれた時間の烙印、あるいは紙やすりで造り出したざらざらした質感が一種味わい深く、物質の気丈さを滲み出している。この果敢さ、強靱さが、「鉄哥們」という店の名にふさわしい。

工場内の白色電灯は、たくさんの溶接跡をのこす鉄器を照らしている。17インチの自転車ホイール、反射するリムの冷たい金属的色感が美しい。念入りに作られた「トランスフォーマー」のほか、「鉄哥們」には大きな水道管を改造した小型機関車があった。自転車のサドルは鉄制蜘蛛に……クールで豪快な鉄器には、ゆかいな快活さが満ちている。

ひらめきは絶えず生まれ
国際的ブランドが後ろ盾

こんなにも古ぼけた貧弱な場所でも、ブランド文化の発展には関係ない。才能あふれる彼らは古工場で新しい着想を生みだし育てる。M50のもつ、忘れかけた静けさ、低家賃、膨大な空間。これらは当初、芸術をリードする者達にとり、自由に創意を発揮させる先決条件だった。

もちろん芸術家が集中する地域「上海のセーヌ左岸」を際立たせているのは、スイス香格納画廊(ShanghART)、イタリア比翼芸術センター、フランス東廊芸術(EASTLINK Gallery)、イギリス領事館文化芸術処芸術家アトリエ、カナダ芸術景画廊等といった多くのブランドである。ここで古工場の金属の質感が透明なガラスと混じり始めたのだ。旧式な鉄の欄干やガラス窓は独特なlogoに変わり、長い間修理されていない道は芸術家が創造する彫塑の一部分になった。両側には精緻な街灯が並び、これらモダン要素がM50に息吹をもたらした。

新しいクリエイティブスペー
スおもしろい店構えを撮る

M50には異なる風格の画廊やアトリエのみでなく、建築、内装、家具設計の会社も次々入って来て、ブティックも何軒かある。芸術書籍店、音楽専門店も小型倉庫にやって来た。こうしてM50は、現代文化芸術区と工業旅行区を結びつけた、新しいクリエイティブスペースとなった。

それぞれの工場(画廊)を見た後、路上で写真を撮るのもおもしろい。変わった店構えを記録に撮ろう。例えば芸術景画廊の隣にある大きな人物像やH-Space隣の三次元立体空間はかなり時間をかけて設計された作品だ。また様々な姿勢で撮影している観光客を撮るのも良い。自ら選んだ角度で捉えた自信作。まるで芸術家になったような快感だ。

ギャラリーを通り抜ける間に
思考の歩みが止まらない

工場の廊下を抜け画廊間を行き来する。そこには「製造夢幻」と名づけられた青年アーティストの作品展があった。複雜に乱れた線は内心のひ弱さ、孤独、焦りを表現し、この環境が創りだしている静けさとはいささか相容れない感じがする。振り返ると「嘘」(中国語で「静かにしてください」の意)という赤い字が目に飛び込んできた。突然、これが己の精神世界の反省心かと気付かされる……己の内心に潜む落ち着きのなさを、静寂のベールが覆い隠せるわけはない。

画廊と画廊との間にはわずかな隙間があるが、ここに踏み出しただけで、また違う画廊にいる感じだ。異なる趣の芸術との間に橋を渡すことで一種の感覚的共鳴が生まれ、この共鳴は、邢文丹の「牆里牆外」という写真展まで続く。ここでは、建築模型と人物の合成で巨大空間にある小さな人物の孤独と迷いを、異なる角度から表現している。湯南南は、暗い道や歩行者が急ぎ足で歩く姿などを記録し、困惑や茫漠とした情緒を現している。彼と杭鳴峙、王豫明、張曉明らの共同写真展「城・惑」では、一枚一枚の白黒写真に物体と都市との関係を記録している。

また思考し、歩き続ける。「もうひとつの現場」香格納画廊にもどった。ここは作品の展示になっているわけでなく、芸術家の創作過程での構想を実現させる場所だ。彼らが長年保存してきた、貴重な下書きの中から精選された最高作のほとんどが初公開だ。有名芸術家である余友涵、李山の早期の絵画下書きもある。周鉄海の雕塑模型、映像作家である楊振忠撮影の作品が何かを語る。また、若いアニメ作家の唐茂宏、孫遜のアニメ下書き…「もうひとつの現場」に沿い思考し続ける。凝ったデザインの小テーブルにはパンフレットが置いてあった。H-Spaceを通りまた違う出口が、ここは別の再生空間にやってきたように感じられ、活力と情熱が湧き出す。

若者の活力が与えた
モダン文化の道標

壁がまだらにペインティングされたショッピングギャラリーを通り、古い家並みに囲まれた路地裏に出た。ここではある創作グループの表現芸術が、今まさに進行中だ。若者が直立した木の板に寄りかかった姿が見える。時折、両手で頭を抱えたり胸で腕組みをしたり、顔には凶悪な表情が。もう一人の若者は、カメラを担いで様々な角度で彼の写真を撮っている。表現に熱中するこうした若者達も、ここM50の若さが生み出す活力に加勢している。

「上海のセーヌ左岸」として知られ、上海モダン文化の新しい道標であると同時に、芸術家たちに広い創意空間を与えているM50。今後が期待されている。

よい暮らし
紡績工場跡地に生まれた芸術文化スペース
上海のセーヌ左岸─M50
上海で最初の食べ放題日本料理店
時代の魁 老舗「大江戸」
日本人に愛されているマグロ!
たまには東京の下町を!


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