高級感をぬぐえない日本料理。これをより庶民に近づけようと「大江戸」は、開業一年後に200元食べ放題を始め、間もなく全上海の日本料理店に広まった。しかし「大江戸」の真髄は、料理への心配りと品質のこだわりであることを常連たちはよく知っている。
1998年当時の上海、日本料理は一般大衆にはとても手の届かない五つ星ホテル内の高級食で、値段が高く、財布の中身が心細い一般市民は近づけなかった。1994年、名店「伊藤家」が高級ホテルから離れて店舗を構え、高嶺の花だった日本料理は華麗なその姿を見せた。とは言え、食材コストの関係からメニューは値の張る一品料理のみで、庶民にはまだまだ手が届かなかった。
上海では初の食べ放題
日本料理の高級感を打ち破るため、「大江戸」は開業一年後の1997年、上海で初の2 0 0 元の食べ放題を出した。間もなく全上海の日本料理店に広がり、十数年後の今日では、ほぼ90%の店が120元から200元で食べ放題をやっている。こうして、日本料理は上海飲食業界でひとり勝ちの状況となった。
炳森の大自慢は、食べ放題の「魁」を果たせたこと。上海初の試みだったが、間もなく日本料理が庶民のものになり、接待や会食のトップに選ばれるようになった。彼は、これで日本料理の市場も広がるだろうと考えた。しかし、常連達がここを訪れるのはこの店が食べ放題の魁だからではない。料理や品質の良さこそが、十数年続く「大江戸」の真髄であると信じている。食べ放題各店の中でも「大江戸」は、各種あらゆる刺身を提供し続け、質と量の両立を実現している。
新しい一品がメニューに満載
この十数年来、なじみ客の多くが50代だ。彼らはここで初めて日本料理を口にしたのかも知れない。「大江戸」での食事には、親しみやすさや懐かしさに加え、一種の安心感がある。1997年以来、食べ放題価格1人200元はずっと変わらないが、常連でいられる最大の鍵がメニューの中にあった。
品数は2 0 0 種以上。刺身、揚げ物、焼き物、煮物など選り取りみどりだ。鮭、北極貝、マグロ、その切り身の厚いこと。一口食べた満足感は、まさに日本料理の精髄。高価なウニも食べ放題メニューに載る。こればかりではない。多くの食べ放題店では、注文の品が安いものばかりであったり、高価なものは限定品だったりしたが、「大江戸」は違う。年中新しい品が増え、メニューも満載だ。
刺身でわかる
その店の心意気
食べ放題で客への誠意が伝わるのは「料理が運ばれてくる速さ」である。店員の数が不足し、客はいつも苦い思いで注文した料理を待っていたり、刺身を注文したのに運ばれて来たのは手羽先の揚げ物だったり、これは多くの店で目にすること。技術的なことなのか、あるいは高級品の量を限定しているのか、コストの抑え方も多種多様だろう。最もよくある節約テクニックでは、すべて冷凍食品を使う。
「刺身で店の誠意がわかります。」と吳炳森。「大江戸」の新鮮な刺身には艶があり、《天才小廚師》(アニメ「ミスター味っ子」)で誇張されたようではなくとも、実に「キラキラ」していて通の人なら一目でわかる。素人は口に入れてからわかる。肉厚か、薄すぎるか、噛み心地にこしがあるか、真綿のようか、刺身の良し悪しは口当たりだ。
客のいち押しは「焼き銀だら」。見た目は焦げているが、一口食べた魚の身は柔らかい。青蟹かワタリ蟹を鍋に入れた、創立以来のキムチ鍋もいい。一日に50鍋を超える。日本料理を代表する「牛刺し」は、もちろん人気の美食で店の自信とともに運ばれる。「焼き牛タン」、「てんぷら」「焼きりんごとココナッツ」も、旨い物好きの話題によく上がる。
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ちょっとした
居酒屋気分
老舗が最も大切にしているのはやはり変わらない品質だが、十数年で客は変わり、店も5度の改装を重ねた。開店時から通っているのはみな日本人だ。個室は主に畳で、現在の客層は近くのサラリーマンが主であるため、畳の部屋をいくつか残しているほか、簡素なボックス式の席もある。暗い照明は、日本の居酒屋の雰囲気を漂わせる。
人気の「大江戸」、途切れることなく訪れる客の話し声と熱気であふれた店内に、しゃれたたたずまいなどはない。「お客様は、この豪快でにぎやかな雰囲気が好きなんです。」と話す吳炳森。店員がサンダルで忙しく歩き回る、バタバタという足音さえどこか懐かしさを感じさせる。
店の良さもさることながら、店員の質も良い。「揚げ物場、煮物場、焼き物場で働くコックの半数がベテランです。彼らの多くが、若いときからここで働いています。結婚しても、ずっとここにいるんですよ。」経験豊富な従業員であればこそ、客の顔で好みの味がすぐわかるというもの。「大江戸」の三分の一がリピーターだ。
十数年のベテランコック長、吳炳森でも、絶えず新しいものや変化を求めていると聞き、うれしくなる。客の注文からメニューを変えていく。店を思うあまり、日本からチーフコックを呼んで再び日本料理の旋風を巻き起こそうとも考えた。そこから新しい日本食の流行をとり入れようとしている。大切なのは、品質にこだわること、絶えず新しいものを作り出すこと、料理はより精巧であることだと吳炳森は言う。上海「日本料理街」にある「大江戸」は、この心意気で上海屈指の客数を誇り、その業績を維持し続けている。 |