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ドイツ中部の小さな街カッセルは、グリム童話が生まれた土地として、また5年に一度開催される美術展「ドクメンタ」の開催地として有名である。古都ならではの美しい街並みは多くの人々をひき付けてやまない。
カッセルの街の歴史は古い。ドイツ最古といわれる1558年建立の天文台や1604年建立の劇場、また欧州最古の公立博物館といわれ1779年に建立された、フリデリツィアヌム美術館(Museum Fridericianum)もある。東西ドイツ統一後、国土の「へそ」の地に位置することになったカッセルは、フランクフルト、ベルリンなどの大都市からいずれもICE(ドイツ高速鉄道)で2時間あまりと、交通の便が良く、国内交通の中継地としての役割を果たしている。そのため小都市でありながら訪れやすい観光地である。
普段は静寂に包まれているカッセルだが、5年に一度、世界の注目がこの街に集まる。1955年に始まった世界的アートイベント「ドクメンタ」(Documenta)がカッセルで開催されるからである。この「ドクメンタ」の時期ともなると、人口20万、面積100平方キロほどのカッセルの街には、70万人もの観光客が訪れ、国内有数の観光スポットと化す。
またカッセルは、ドイツ観光の目玉である「メルヘン街道」のちょうど中間に位置する。1975年に組織されたこの「メルヘン街道」は、フランクフルト付近、グリム兄弟の出生地ハーナウ(Hanau)を起点とし、終着のブレーメン(Bremen)まで約600キロの道のりである。道中にはグリム童話ゆかりの地が約60箇所あり、それぞれの地はいずれかのストーリーと関わりがあるという。
世界に名だたる童話作家
グリム兄弟
世界中の子供たちの心を躍らせるストーリー。童話作家として、アンデルセンと並び高く評されるヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟。兄のヤーコプは1785年、弟のヴィルヘルムは翌年の1786年、フランクフルトに近い小さな街ハーナウで生を受けた。
童話作家ということでユニークな生き方をしたと思われがちな二人だが、実は彼ら二人は筋金入りの学者型人間であった。大学で法律を学んだのち、カッセルに移り住み約30年間、図書館で働きながら40冊もの本を出版した彼らは、グリム童話の編集のほか、ドイツ語の辞典や文法書など、研究の分野でもめざましい活躍をした。特にゲルマン文化、言語の保護に対する貢献は非常に大きいとされている。
兄弟が編集した『子供たちと家庭の童話』(Kinder und Hausmarchen)が、いわゆる世に知られるグリム童話である。兄弟はフランス、イタリア、フィンランド、スラブなどの言語、文化を研究し、またカッセルの住民から口述で聞き取った民話や童話をもとに書きなおした。この本には『シンデレラ』『眠れる森の美女』『白雪姫』など210篇もの童話が収集されており、1812年から計7版発行された。グリム童話は、現在までに世界で160種以上の言語に翻訳されている。カッセルの街には、魅惑の童話を数多く生み出した二人を記念し、小さな博物館が建てられている。
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美しき庭園から望む景観
童話だけがカッセルの魅力ではない。優美なヴィルヘルムスヘーエ山公園(Wilhelmshöhe Berg Park)は、ロマン主義の華やかな頃の姿を今に留めている。240ヘクタールにも及ぶ広大な緑地はヨーロッパ最大の丘陵公園であり、園内には雄大なヴィルヘルムスヘーエ宮殿(Schloss Wilhelmshöhe)が建ち、18世紀末建立のレーベンブルグ城(Löwenburg)も望む事が出来る。
ヴィルヘルムスヘーエ山公園といえば、毎年夏に行われる公園の地形を利用した「水の芸術」が名高い。山の頂きにそびえるヘラクレス像の下の大噴水が噴き出すと、水がゆっくりと傾斜を伝いはじめる。園内の石の階段は滝となり、流れは丘を超え、麓の市街地まで流れてゆく。約5キロの間には水が造り出す噴水や滝など多くの仕掛けがあり、観光客はこうした「水の芸術」を楽しみながら、カッセルの風光明媚な景色を満喫できるのだ。公園の一部はスパリゾートとして開発され、四つ星ホテルのシュロスホテルヴィルヘルムスヘーエ(Schlosshotel Wilhelmshöhe)がある。
このほか、ヴィルヘルムスヘーエ宮殿も見逃せない。ヴィルヘルム6世の鶴の一声で1786年から1798年の間に建立されたこの優美な宮殿は、第二次大戦で大きな被害を受けたが、戦後に修復され、一部は美術館となり1974年に開放された。レンブラント、ルーベンス、ヴァンダイク、ティツィアーノら巨匠の作品が収蔵されている。またギリシアローマ時代の文物も多く収蔵されている。なお「ドクメンタ」の時期には会場のひとつとなる。
バロックの雰囲気漂う
オランジェリー城
静かなカールスアウエ・パルク(Karlsaue Park)には、バロック建築のオランジェリー(Orangery)宮殿がある。カール王子(Landgrave Karl)により1710年に建立したこの宮殿は、夏は離宮として利用され、冬は温室として王子の愛した地中海の植物が冬を越すために作られた。300年経った現在も往時の華やかさを失っておらず、天文、物理、自然に関する科学館として開放されている。また周囲の緑地は市民の憩いの場となっている。ドイツの他の都市同様、芸術、文化に加え、カッセルでは美食も楽しめる。この地のレストランはメニューも多 く、価格もリーズナブルで、土地ならではの味を満喫できる。なおカッセラー(Kasseler)という名の地ビールもある。
ドイツ料理に舌鼓
ドイツのソーセージ、ハムは名高いが、カッセルにはアーレ・ヴルシュト(ahle Wurscht)という特産ソーセージがある。一見サラミそっくりのその姿は、150グラムの豚挽肉に塩、ニンニク、コショウ、フェンネル、マスタードなどを加え、2~9ヵ月乾燥熟成して作られる。その独特な食感は、しっかりとした味わいのライ麦パンとよく合う。
レストランでは、ポテト、ハム、アイスバインが一般的メニューとなるが、ほうれん草のキッシュとポテト、そしてフライドエッグ。こうした素朴な味の良さも忘れがたい。ポタージュはポテトをベースに、青豆、ハム、玉ねぎ、人参とともに鍋で煮込んで作る。パンにつけながら食すのが基本だ。
もっともドイツ料理らしい味を試したければ、ポテトサラダとアイスバインをオーダーする事をおすすめする。豚すね肉のやわらかい肉質、適度な塩味とやわらかいポテトがよく合う。さらにポタージュかカッセラービールを頼んで一緒に楽しむのもよい。ドイツの庶民料理を十分に満喫できるはずだ。
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