の上海最古の歴史ある七宝老街の街並みを、ゆっくりと歩いていただきたい。古き良き時代の人々の暮らしぶりが、いつのまにか感じ取れることだろう。赤い門が迎える古い店で骨董書画を心ゆくまで鑑賞したり、七宝老街の特色ある小吃(軽食)を味わってみたり、また楼閣で小唄の一節を聞いたり……人々に忘れられていた七宝老街が、若者からも人気の観光地になった。
北宋時代の独特な造りを保存
青年路の東側入口から七宝老街に入る。クスノキの並木道に沿って老上海の「弾硌路」(石畳の道)のような歩行者天国を歩くと、新しく建てられた鐘楼広場に出た。そこには「七宝老街」と刻まれた石碑坊(鳥居の形をした石碑)がそびえ、その金色の縁取りに目を奪われる。片面には「北宋遺存」という字が刻まれている。楼閣門を通り抜けると、3階建ての六角宝塔式鐘楼があり、「鎮街之宝」(街を守る宝)の氽来鐘が鐘楼の最上部に置かれてあった。
その鐘が掛かるところに2匹の龍が交錯しているが、残念なことに1匹の龍の頭が破損していた。鐘楼の後ろは石碑廊下で、そこには「風回高閣鐘声遠、日落長廊疏影稀」(楼閣の鐘の音が遠く聞こえ、長廊には落日のうすい影が射す)と刻まれている。広場の向かいには、元の七宝教寺古舞台を基に建てられた舞台があり、観光客はそこに上がってお茶が飲める。また皮影戲(影絵芝居)、滬劇(上海語の劇)、評弾(蘇州方言で語る、日本の浪曲と講談を合わせたような話芸)も観賞できる。
「衣装天国」衣類や寝具の主要市場
振り返り北大通りに向かって歩くと、青黒色の瓦に白い壁といった明清式建築があった。ここには「綿織坊」という場所があり、明清時期には衣類や寝具の主要市場の「衣装天国」であった。
最初の門をくぐると大紅花轎(赤い駕籠(かご))が目に入って来る。正面の壁には「七宝紡車街」と彫られた石の彫刻図、次の門を通ると展示館のある庭に出た。展示内容は、旧式便器、タンスといった類の嫁入り道具のほかに、百人の子供たちでデザインされた刺繍の「福」という字、牡丹の花の図案で刺繍された「喜」という字などがある。また観光客はここで模擬結婚式も体験できる。2階には圧延機、綿の打直し用の弓、糸搓り車、はた織り機、染め物屋、染石、裁縫屋等があり、出し物に応じて操作され、栽培、收穫、紡績、機織、染色までの過程すべてを見せている。
さらに北大通りを西に行く。中国江南地方にある清朝の走馬楼のような建築物がある。蒲匯塘橋の長さは29メートルで南北にそれぞれ20段の階段、両側の石で作られた手すりには文字が刻まれている。昔は橋のたもとに、各種風味の小吃、本土特産の布類が所狭しと並び、住民や露天商、客たちの熱気でにぎやかだった。現在、蒲匯塘橋近くの七宝老飯店や天香楼の観光客たちが往来し、この橋は今でも一番の活力に満ちた場所である。
南北の大通りはそれぞれ異なる風情
北大通りには手工芸品、書道・絵画の作品、手織り布、記念館などがあり、特有の民俗芸術をみせてくれる。南大通りでは、庶民の生活感や素朴さといったものが味わえる。私たちの目を楽しませてくれるだけでなく、肉のかす漬け、お菓子、羊の肉など、特色ある小吃を堪能でき、昔の様々な商売、工房や民俗文化を知ることができる。
さらには、まるで生きているような蝋人形たち、色々な手作り製品の展示、綿の打ち直し屋、鍛冶屋、大工、錫製品店、仕立屋、作業場、量り器具店などといった職人の作業場の再現などから、伝統職人の仕事ぶりを紹介している。蝋人形の豊かな表情や、それぞれ違ったポーズの中に、こつこつ働くことで豊かになった庶民生活の知恵を垣間見た。
一大特色の酒造文化
南に行くと昔ながらの酒蔵に出た。七宝の酒文化も大きな特色で、明清年間に酒の醸造で名が知られた楊鼎源糟坊という酒蔵があり、建国初期の「七宝大麹」というお酒は上海で売れ行きがよかったという。
現在、ここでは「七宝大麹」の調合方法を基に、土の窖池や蒸留鍋を使用し、コウリャンとふすま(小麦を粉にする時に出る皮くず)等の原料を抽出後、発酵・蒸留をしてお酒を造り出している。店内では、酒造の全過程を直接見学できる。
毎日、昼ごろには新釀造酒が出来上がり、竹筒の中から漂う良い香りが店内至る所にあふれる。また量り売りもしている小瓶入りの酒はお土産にも良い。美酒を飲めば、おのずとつまみがほしくなるものだが、七宝糟肉(肉のかす漬け)はここの絶品で、作り方は先祖伝来の秘伝だ。売られているビン入り糟肉は家に持ち帰り20分蒸してから食べる。
上海老街の南北風味が集結
南大通りに沿って歩き続ける。どこの店も長蛇の列で、お目当てはもちろん七宝の特色小吃だ。ここには上海老街に昔からある南北風味が集まっている。老鴨粉絲湯(カモと春雨のスープ)、豆沙餡海棠糕(小豆あんのお菓子)、鮮肉餡刺毛団(ひき肉ともち米のだんご)、七宝方糕(もち米の四角いお菓子)はみな、たとえ並んでも食べる価値がある。
ここでは、街のあちこちに数え切れない程の各種特産品が溢れている。白切羊肉(茹でた羊肉)、燻癩蝦蟆(焼きガマカエル)、農家菜滷蛋(味付け玉子)、荷包豆腐乾(香り豆腐の蒲の葉包み)、農家拆蹄(豚足)、糟魚(魚のかす漬け)、粽子(ちまき)等、いつのまにかたくさんの買い物をしてしまう。歩き疲れたら老茶館で少し休憩、お茶をしながら無料上演している講談に耳を傾けるのもよい。
蟋蟀草堂で民俗文化に触れる
南通りの端までやってきた。そこは富強街という通りで、西に行けば、北に面して建てられた「蟋蟀草堂」(コオロギ草堂)がある。ここでは七宝住民たちの娯楽と民俗文化が観られる。草堂には2個の庭があり、小さめの前庭を通り後庭に出ると、そこは「コオロギ文化展示ホール」で、古井戸、コオロギの浮き雕り、コオロギ回廊など、とても特色がある。
庭内の草地に、子供たちがコオロギを闘わせている姿を表現した彫像があった。さらに庭の端にL字形の建物があり、コオロギの秤やコオロギ格闘の器具などがたくさん陳列されている。館内では、昔のコオロギの格闘場と規則、またコオロギの常識などを紹介している。彫像のコオロギは、付近の田んぼにいた「鉄砂青」という名前のコオロギで、愛好家たちからは『虫の王者』と呼ばれていた。身体は白、6本の足は青、首にはまるで砂鉄があるようなコオロギで、その名が付けられたという。
蟋蟀草堂から西へ行くと「周氏マイクロ彫刻館」があり、周長興の父娘が創作したマイクロ彫刻の芸術品を展示している。館は3階に分かれ、1階は石壺、印章等のマイクロ彫刻作品、2階は石壺、碑林石刻、3階は紅楼マイクロ彫刻陳列ホールになっている。ここの紅楼マイクロ彫刻には、怡紅院、瀟湘館、大観楼等9個の館、約3,000件の作品、《紅楼夢》を描写した建物がマイクロ彫刻になり、小さなスペースにおさまっている。手で触ることができ、実に精巧に作られていることが分かる。時間があったら、ぜひ七宝老街の旅をお勧めしたい。今までに味わったことのない、独特な満足感で心身ともに癒されること請け合いだ。
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