以前にもこのコラムで触れているが、中国大陸に所在している外資系企業が利益送金に対して5%の税率(通常は10%)を享受するためには、単に海外の親会社を香港会社に変更すればいいのではなく、工商局の手続きが済んでから12ヶ月が経たないと利益の送金が行えなかったり、税務局に対し「合理的商業目的」の説明が必要だったりと様々な要求をクリアしなければならない。ただし税務局は、香港での実際の経営や、オフィスの設立、また従業員の採用などの要求はしていない。
上述した様に、親会社を香港会社に変更する際、税務局へ「合理的商業目的」の説明をしなくてはならないが、中国各地の税務局の判断基準は様々で、各地でこの件をめぐる検討が絶えない。そこで、国家税務総局は今年4月30日に59号公文書「企業再編に係る企業所得税の処理に関する若干問題についての通知」を発表した。この公文書は、どの様な状況なら5%の利益送金所得税率が適用されるかという疑問以外に、もう一つ、海外株主を香港会社に変更することで従来の株主に対し持分譲渡として税務局が課税するかどうかという疑問に対しても返答している。
もし異なる海外法人の間の持分譲渡で、譲渡価格が純資産価値を上回る場合、従来の海外株主はプレミアム部分に対し中国において10%の企業所得税を納付しなくてはならない。しかしここで問題となるのは、多くの外資系企業が行っているのは本当の意味での持分譲渡ではないということである。
それはグループ企業のトップ層の株主には変更がなく、単に中国に所在している企業にとっての親会社が変更されるに過ぎない。昆山など多くの地方政府は海外の株主の変更に対し、工場敷地の広さによって一定費用の支払いを命じているが、外資系企業が「実際に支配する株主」つまり海外のトップ層株主に変更がないことを証明できれば、この費用の支払いは免除される。
今回の59号公文書を分析してみれば、海外株主の変更、つまり企業再編を、「一般税務処理」と「特別税務処理」の2種類に区分している。前者は上述の様な異なる海外法人の間で、実際に行われる持分譲渡行為に適用される。つまり、公正価値に基づき資産譲渡により生じた所得や損失を認識しなければならない。後者は海外最終株主が変化しておらず、中国に所在する企業の海外親会社を香港会社に変更する場合に適用される。したがって従来の課税標準をベースにするため、資産譲渡により生じた所得や損失を認識しないのである。
しかし、中国に所在する外資系企業の海外親会社の変更時に、再編規定の「特別税務処理」を適用するためには、さらに以下の条件を満たさなければならない。
1.合理的な商業目的を有し、納税額の減少、免除又は滞納を目的としない。ここで言う「納税額」とは利益送金所得税に限らず、持分譲渡により生じた各項目の税金も含んでいる。また条文にある「納税額の減少、免除又は滞納」とは税金回避行為のことで、合理的な節税行為とは異なる。
2.企業再編後の連続した12ヶ月以内に、再編資産の従来の実質的な経営活動を変更しない。
3.企業再編により持分を取得した従来の株主は、企業再編後の連続した12ヶ月以内に取得した持分を譲渡してはならない。
もし従来の「実際に支配する株主」の海外の100%子会社が、中国に所在する企業の持分を譲渡する場合は、それによって所得税の各項目に変更が無く、更に3年以内にその持分を他人へ譲渡しないと税務局に対し書面で承諾すれば「特別税務処理」が適用される。
したがって中国に所在する外資系企業の海外親会社を香港会社へ変更する際の税務問題については、海外の実際に支配する株主に変更が無く、且つ資産の価格計算基準が従来の課税ベースであり(純資産価値が元の投資原価を下回る場合は純資産価値を用いて計算すれば良い)、更に税務局の特定した期間以内に持分を第三者に譲渡しないという規定に従えば、海外株主の変更の過程で企業所得税を納税しなくても済むのである。 ( 訳/蒲暁萍/法律一部 ) |