昴月刊  
当期目次に戻る  
社長の話   財務-会計-法律の窓口   経済日報連載財務・法務コラム   每月ニュース フラッシュ   よい暮らし   総合生活情報
   
 
世界旅行情報
世界に誇る3つの美術館
工業都市から芸術の都へ
姿を変えつつあるバーゼル
文・写真/李俊明 訳/駒田英

朝もやに包まれ、まだ眠りの中にある週末の街を、ライン川がゆったりと流れる。河岸にはアウグスタ・ラウリカ(Agusta Raurica)に向かう観光船が出発の時を静かに待っている。ローマ時代の遺跡であるアウグスタ・ラウリカでは、古代ローマ文明に触れることができ、野外円形劇場も残されている。2000年以上も前、古代ローマ人によって選ばれたこの地は、その後、大いなる繁栄を遂げたのである。

鉄道とライン川の水路により、バーゼルはスイスからヨーロッパ各都市へ向かう拠点となっている。この数百年間に渡り、河港や物流、運輸の要所としての発展を続けてきたことによって、スイスを代表する工業地区となった。

往時隆盛を誇った水車による製粉業はすでに衰退し、この街の発展を語る上での歴史の一部に過ぎないが、バーゼルが今もヨーロッパ大陸を代表する工業都市であることには変わりはない。変化した点を唯一指摘するならば、家内制の手工業から先進的な生化学工業へと変貌を遂げたことであろう。

千年の悠久の時を経て、バーゼルはこの21世紀、工業発展がもたらした動力と財力をもって世界に誇るべき芸術の3つの「宝庫」を手にした。そして芸術、建築、人文の各分野における確固たる地位を得たのである。
 
バーゼルのランドマーク その1ジャン・ティンゲリー美術館

はたして、芸術的な雰囲気があふれる都市づくりのためには、政府や自治体が多額の予算をかけて施設を建設しなければならないのだろうか。バーゼルの例はその点において非常に興味深い。バーゼルを代表するこの3つの美術館は、収蔵品の質のみならず、経営方法も際立っており、世界中から多くの参観者を集め、この街の文化的素養を高めている。そしてさらに興味深いのは、その美術館の多くが、一般企業によって設立されたものであるという点であろう。

市の中心部に最も近い場所にあるジャン・ティンゲリー美術館(Museum Jean Tinguely)から紹介しよう。この美術館は、「静粛」という美術館の原則を打ち破った「にぎやかさ」が特徴である。ではなぜ「にぎやか」なのか。一歩館内に足を踏み入れると、1,800平方メートルもの巨大なホールがある。ここが機械芸術の展示場所である。スイス人の芸術家であるジャン・ティンゲリーは、廃鉄を利用し、光や音、様々な動きをもつ芸術作品を制作することで、見る者に再創造することの意義を考えさせている。館内の至る所から聞こえる金属音は、にぎやかな場所が大好きな子供たちを夢中にさせるはずだ。
この美術館は、1991年にティンゲリーが亡くなったのち、彼の友人であった企業家パウル・ザッハー(Paul Sacher)が彼のために建設したものである。またバーゼルに本拠を置く製薬大手のエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社(F. Hoffmann-La Roche)もライン川沿いの広大な空き地を提供し、バーゼルの街、そして市民に優れた芸術に触れる空間を与えたのである。


バーゼルのランドマーク その2ショーラガー

ローレンツ財団により、バーゼルの南に位置する工業地区ミュンヒェンシュタイン(Münchenstein)に建てられた美術館「ショーラガー」(Schaulager of the Laurenz Foundation)は、5月から9月まで一般公開されている。

この「ショーラガー」は、「北京国家体育場(通称鳥の巣)」を設計したジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンの手によるものである。バーゼル出身である2人は、故郷の美術館を設計するにあたって、モダンアートの多様性を表現しながら、室温管理が可能な大型倉庫としての機能も持ち合わせることに成功させた。2003年に落成するとすぐさま高い注目を集め、参観者は今もなお後を絶たない。

一見、地味に見える建築は、実にユニークだ。外壁には栗石がはめ込まれ、ざらざらとした感覚を与えている。建物の正面入口は台形を切り取ったような形で内側にくぼんでおり、まるで映画館のスクリーンのようである。左右には収蔵物を紹介する大型の液晶画面があり、美術館から外の世界に向けて開かれた窓のようにも見える。

館内に入ると、地上28メートルにある天窓が目に入る。地下階から入口ロビー、天井まで光が貫かれ、強烈な立体感を参観者に与えている。一方で、館内ではまるで巨大な倉庫の中にいるような感覚を覚える。各階とも6メートルの高さがある上、仕切りも取り外しが可能である。そのため空間を柔軟に運用でき、大型のオブジェも陳列しやすい。ヘルツォークとド・ムーロンは、もともと近代アートを陳列するための「倉庫」としての建築を意図していたが、「収蔵」という概念をデザインにおけるポイントとしていたため、単純な水平面と垂直面によって空間設計を行った。

ロビー脇には書店と喫茶店がある。高く天井まで壁がそびえているが、光沢のある壁は不規則にくぼんでおり、立体感を感じさせる。栗石がはめ込まれた外壁とこの内壁がまるで呼応しているかのようで面白い。

バーゼルのランドマーク その3 バイエラー財団美術館
2006年4月、68才のレンゾ・ピアノは、米『タイム』誌「世界で最も影響力のある人物100人」に建築家としては唯一選ばれた。
 
『タイム』誌は、かつてパリのポンピドゥー・センターを共に手掛けたリチャード・ロジャースに寄稿を依頼したほか、ピアノを「光と軽さの巨匠」(master of light and lightness)と評し、建築における光線の動きを十分に表現していると絶賛した。ロジャースはピアノの幅広い作品に触れ、バーゼルのバイエラー財団美術館(Beyeler Fondation)は、その「軽さ」という特徴が特に顕著であると指摘した。

バイエラー財団美術館は、印象派作品の光の質感を体現するとともに、近代アートの雰囲気も感じさせる美術館である。非常に丁寧につくられているため、参観者が五感で芸術の楽しさを感じることができる。

この美術館の創立者は、バーゼルの美術商バイエラー夫妻(Hildy and Ernst Beyeler)である。50年間に渡り画廊を経営するかたわら、多くの芸術家たちと交流を深め、驚くべき数の近代芸術の傑作を収蔵した。そして1991年、この収蔵作品を展示するために、エルンスト氏がレンゾ・ピアノに設計を依頼し、バイエラー財団の美術館として1997年10月に開館した。

入口に近づくと、池が建物、そしてモネの『睡蓮』やスイスの著名な彫刻家ジャコメッティ(Giacometti)による人物彫刻などの収蔵品をとり囲んでいる。館内から漏れた光によって、静かな池の水面に特徴的な細長い彫刻の影が映し出されている。こうした静寂の美に人々は魅せられる。

透き通った天井は先進技術が取り入れられ、館内には常に適度な日光が差し込むようコントロールされている。また人工光源と組み合わせることで、常に優しい自然の光に包まれながら、同時に貴重な芸術作品を紫外線による損傷から守ることを可能にしているのである。太陽の光のもと、窓の外には池があり、なだらかな丘陵が美術館を囲んでいる。こうしたすばらしい環境のなかでモネの『睡蓮』を鑑賞していると、まるで自分が今、モネが晩年身を寄せた「ジヴェルニーの庭園」にいるのかと錯覚を起こしてしまいそうになる。

なにより、この美術館が私をひきつけるのは、その控えめな「たたずまい」にある。収蔵品の芸術的な価値、卓越の美を引き立たせつつ、かといって建築物そのものは引きすぎているわけでもない。レンゾ・ピアノは、このバーゼルでもっとも素晴らしい美術館に、建築、芸術そして自然との調和の美を創りあげたのである。
( 訳/駒田英 )

総合生活情報
氷河期を舞台に繰り広げられる 
爆笑ドタバタコメディ
アイス・エイジ3 ティラノのおとしもの
世界に誇る3つの美術館
工業都市から芸術の
都へ姿を変えつつあるバーゼル
あなたの血液、
油分が多すぎませんか?
脳卒中や心筋梗塞に注意!
   



 電子報  I  人才招募  I  聯絡我們